今朝のカフェボンボンおすすめメニューは『言い寄る』。
田辺聖子の最高傑作といわれる極上の恋愛小説です。
『言い寄る』
著者:田辺聖子
出版社:講談社
大阪生まれの乃里子は31才。デザイナーの仕事は順調で、恋愛は気持ちのおもむくまま。年下の御曹司の剛(ゴウ)とは似た者同士、遊んでいて楽しいし、時には年上の魅力的な男たちに口説かれてみたりもする。
自由奔放に男を翻弄するのに、好きでたまらない五郎にだけは好きといえない—。「肉体も心も、私が独占したい」と願っているのに、どうしても言い寄れない。心底愛しすぎているから、言い寄ってだめだったらと思うと怖くて正面からぶつかれない。
本当は純情可憐だからこそ、「言い寄る」ことの重さにたじろいでしまう。剛はそこのところを愛しく思っているけれど、五郎はどこまでもトンチンカン。ときめいて、嫉妬して、ままならなさに身悶えする乃里子の恋ごころ。これぞまさに「恋愛小説」の決定版ですね。
デザイナーとしての乃里子も魅力的。彼女が考えた下着がすごく素敵なんです。スリップのすそに砂粒くらいの小さな鈴がついていて、身動きするとかすかに鳴るの。気づくのは親密な関係の男だけ。なんとも色っぽくて粋ですね。
本書は、乃里子三部作の第一弾。『私的生活』『苺をつぶしながら』と続きます。乃里子に共感し、彼女をとりまく男たちにほだされる。私はずっとこのシリーズのとりこ、とくに強がりな剛のファンです。
乃里子の「朝時間」は、剛の別荘で朝を迎えたシーン。波乱の予感のする海辺の朝です。
本をイメージする飲み物は、乃里子が海で泳いだあとに飲む冷たい日本酒。気怠いからだにしみわたります。
朝からとびきりの小説世界に浸ってください。三部作を旅先に持っていくのもおすすめです!
Love, まっこリ〜ナ
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