朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『富士日記を読む』。
長年にわたって読み継がれる武田百合子の『富士日記』。本書は、作品に寄せたエッセイや書評から『富士日記』の魅力を伝える一冊です。富士山麓での貴重な写真も収録しています。
『富士日記を読む』
編集:中央公論新社
出版社:中央公論新社
『富士日記』には、夫・武田泰淳と過ごした富士山麓での暮らしがつづられている。武田百合子は十三年にわたって、毎日の天気や献立、山荘での出来事や買い物の値段などを克明に記録した。
「河口湖へ買出し。ガソリンを入れる。水まきホース、和菓子(大福)、水蜜、スイカなど。花子、氷レモンを飲む。河口湖通りは人と車で一杯。駅も登山のゆきかえりの列で一杯。店やも、ラーメン、氷水、弁当を食べる人、休む人で一杯。管理所で米を買う。高いみたい」(『富士日記』(上)より)
これは、日記をつけ始めた最初の年の夏、昭和三十九年七月二十六日につづられたもの。たった数行の記録から生活の匂いが伝わってきます。
『富士日記』の魅力を作家の小川洋子さんは、こんなふうに読み解きます。「どんな時でも百合子さんは、夫の真の姿を見逃さない。肩書も立場も関係ない、今、目の前にいる一人の人間の、無防備で壊れやすい髄のようなものを、あくまでも冷静に、しかし愛おしさにみちた手つきですくい出してくる」——。
武田山荘での日々を写した写真が素晴らしい。百合子さんが夫の髭の手入れをしている、一人娘の花さんが撮った一枚。泰淳氏は目をつむっている。百合子さんに安心しきって身を委ねているように。
『富士日記』はいつも心のなかにある、私の大切な本です。この先もずっと、繰り返し読みたい。武田百合子の人柄も伝える一冊をぜひ。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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