朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、角田光代の連作小説『空中庭園』。
幸せな家庭に見えるけど、家族それぞれが秘密を抱えてる。本当は息が詰まりそう。小泉今日子主演で映画化もされた傑作家族小説をどうぞ。
『空中庭園』
著者:角田光代
出版社:文藝春秋
何ごともつつみかくさず、タブーをつくらず。こんな家庭方針を堂々とかかげる京橋家。たとえば、高校生の長女がごはんどきに「自分はどこで生を授かったのか」と訊けば、両親はすかさず答えてくれる。どこどこのホテルでだよ、なんて事細かにあっけらかんと。
家族の中心となっているのは母親の絵里子。誰より積極的に「何ごとももつつみかくさず」を実践しているかのよう。だって、家族の生活のなかに恥ずかしいことも悪いこともみっともないこともあるはずないから。けれど、家族や愛人それぞれが語る話からとんでもない秘密が浮かび上がってくる。ちょっとした隠し事じゃない、明るみに出れば家庭が崩壊しかねない秘密を抱えているのです。
そんな「明るい暮らし」の象徴として、絵里子が作り上げたのがベランダの美しい空中庭園。でも、本当は現実を見ないフリをしているだけ。目を背けているだけ、みんなが自分の役を巧みに演じているだけ——。
外からは幸せな家庭に見えても現実は誰にもわからない。家族にだってわからないのだから。絵里子が作り上げた空中庭園は幻のようにはかなくてせつない。
京橋家の行き着く先は? みんなの抱える秘密にゾクリとしつつ、家族の幸せについて想う一冊です。
Love, まっこリ〜ナ
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