今日のカフェボンボンのおすすめは、名随筆『富士日記』の著者・武田百合子が、あるがままの心でつづったエッセイ集。
ご主人の武田泰淳さんが亡くなって、娘の花さんが成人してから、行きたい場所へどこへでも出かけて行った百合子さん。気の向くままに楽しんだ粋な遊覧話にしびれます。
『遊覧日記』
著者:武田百合子/写真:武田花
出版社:筑摩書房
百合子さんはたいてい花さんと一緒に浅草や上野に出かけていく。家の茶の間の柱に「金曜日、花屋敷は休み」と貼紙がしてあるくらいだから、気合いはじゅうぶん。ヒョウ柄のコートなんか着ての物見遊山は、流行りの町歩きとは根本的に違うような気がします。
ふたりが行く先々は、かなりアクが強いところ。浅草の蚤の市の剥製屋で白熊に見惚れたり、上野の水上音楽堂で水前寺清子ショーを見たり、薮塚のヘビセンターの展示に感動したり。そういう場所で、構えたり臆することなく、百合子さんは物事の本質をずばり見抜いて言葉にする。
いつも感じるんですが、なんかブルースです、百合子さんて。写真家の花さんのモノクロ写真も、下町遊覧の濃い空気が漂っていい雰囲気です。
武田百合子の「朝時間」は、代々木公園の芝生に寝ころぶ朝。
「地べたの匂いは鰻の匂いに似ている」そうです。
武田花さんのフォト・エッセイ『イカ干しは日向の匂い』もぜひどうぞ。
Love, まっこリ〜ナ
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