今日のカフェボンボンは、水の波紋のような世界のゆらめきを感じるエッセイ。
水辺に惹かれる作家・梨木香歩が愛用のカヤックを携え、お気に入りの湖や川で“水遊び”をする。水面を行く小舟・カヤックが、美しい水辺に読者をいざないます。
『水辺にて on the water/off the water』
著者:梨木香歩
出版社:筑摩書房
水の上にたったひとり漂いながら、風の音や鳥のさえずりに耳を澄ませ、岸辺の植物に目を凝らす。
静かに集中した孤独な時間のなかで、さまざまな物語が生まれる。たとえばダム湖に沈んだ町。湖をカヤックで漕ぎながら、かつてそこにあった集落や神社、小学校をたどっていく。するとダムの湖底に幻が見えてくる。
そもそも植物や水鳥や魚の宝庫である水辺は、生命感に満ちた場所。けれど、本書を読んでいると、水辺が異界との境界でもあるような不気味さを感じます。
著者が夜の湖で感じた死の気配も、思い出とともに消えてしまったスコットランドの湖の古い館も、水のいたずらなのか、人の心の迷いなのか……。
水辺の「朝時間」は、アンドリュー・ワイエスの絵のような凍りかけの湖。
立ち枯れの葦の群落に雪が降り積もります。
本のカバー写真は、いまは亡き写真家の星野道夫さんが撮影したもの。靄にけむる木々とさざ波が、幽玄の世界のようです。星野さんの『旅をする木』もご紹介しています。響き合う2冊を合わせて読むのもおすすめです。
よい休日を!
Love, まっこリ〜ナ
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