「早起きがしたい!」そう思い朝渋の門を叩く人は多いですが、いざ早起きをした後にぶち当たるのが、「朝の時間で何をしたらわからない」という問題。
今回は、「『朝1時間』ですべてが変わる モーニングルーティン」を出版された、朝活の第一人者 池田千恵さんと、「昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です」の著者、早起きコミュニティ『朝渋』代表の5時こーじさんのお二人による、朝時間の使い方についての対談のご紹介します。
早起きを25年以上続ける2人のトークには、早起き術や朝の時間を有効に使うヒントがたくさん散りばめられていますよ!
どんなにショボくても、早起きで人生は変えられる
5時こーじさん:池田さんと言えば、慶應出身で外食ベンチャー、外資系コンサルを経験…と輝かしい経歴をお持ちですが、早起きに目覚めたきっかけは何だったんですか?
池田さん:輝かしい…ように見えますが、まずはじめにお伝えしたいのが、私は「ショボい」ということです。慶應義塾大学は二浪で入り、外食ベンチャーは30社落ちて、唯一拾ってくれた会社。取締役からは「使えない認定」をされ、コンサルは時給1,000円台の契約社員からのスタート。全然立派な経歴ではないんです(笑)。
でも、どんなにショボくても大丈夫。私は早起きで戦略的に人生を変えてきました。
大学受験に二度落ちたとき、「今までの延長線上に未来はない」と感じ、5時半起きをスタートしました。それまでは夜遅くまで勉強をして、朝はギリギリに登校する生活だったのを、朝5時半に起きて自習室に直行し、17時まで集中して勉強する生活へと切り替えました。その後、大学時代から会社員時代はまた落ちこぼれてしまって…。就活もうまく行かず、外食ベンチャーでも重要な仕事は一切任せてもらえませんでした。
そのときに、「こんな人生で終わってたまるか」と思い、もう一度早起きをすれば、この暗黒な人生から脱出できるかもしれないと「早起きで敗者復活」を決意したんです。
すると、朝の事前準備で仕事力が徐々にアップ。将来のことを考える時間も増え、段取り力もアップしていきました。私の人生は、起床時間と相関関係があったんです。
モーニングルーティンを戦略的に変える
池田さん:人生大逆転は、日々の積み重ねから。そうやって早起きを25年間続けてきた私から提案したいのが、毎日のルーティンを戦略的に変えることです。
5時こーじさん:「早起き」が良いのはわかるけど、本当に大事なのは「起きてから」なんですよね。
池田さん:そうなんです。そこで私は、人生を変えた朝の過ごし方として、「朝の1時間」の時間割を提案しています。具体的には、前半の30分で仕事や家事の段取りを4色ボールペンを使ってタスク化して色分けし、後半で「自分の人生の種まき」をしていきます。
- 緑:刈り取り(緊急で重要なこと)
- 赤:種まき(緊急ではないけど重要なこと)
- 青:間引き(緊急で重要でないこと)
- 黒:塩漬け(緊急でなく重要でもないこと)
すべてのタスクを色分けすると、その日その日の判断が、色で見えるようになります。もちろん、種まきだったのに塩漬け対応してしまったり、間違えてしまうこともあります。でも、それも色分けして記録しておけば、過去にどんな優先順位をつけてきたか、どういう判断軸で生きてきて、どう改善してきたかを見ることができます。
私は10年以上続けてきたので、メール文も色で見えるようになりました(笑)。これを習慣化することで、自分の行動にメリハリがつくようになるんですよ。
5時こーじさん:なるほど。色分けをするとき、全体のバランス感などは大事にしたほうが良いんですか?
池田さん:バランス感はあまり気にしていないです。むしろ、赤を潰せたかどうか、種まきができたかを見ることで、「数」を意識しなくなる方法だと思っています。
タスクをたくさん潰しても、前に進んでいなかったりするので、「今日も何もできなかった」という思いが残ってしまいますよね。でも、ちゃんとタスクを見極めて、未来への種まきまで終われば人生の充実度は違ってきます。
目指すロールモデルは「志向」で決める
池田さん:では、具体的にどういったことを種まきしていけばいいのか。そのために必要なのが、真似したい「ロールモデル」を見つけることです。
でも、例えば一概に「起業家」といっても、大企業のなかで昇り詰めた起業家もいれば、ひとりで世界を飛び回っている起業家もいる。「起業家」という括りだけ見てロールモデルを選んでしまうと、「志向」が全然違うことに気付かないまま、センターピンを間違えて立ててしまいますよね。
5時こーじさん:僕も自分の人生を考えたとき「センターピン」が大事だと思っているんですけど、これを間違えると、「努力の方向性」も間違ってしまいますよね。
池田さん:そう。そこで、私がオススメしたいのが、「時間×リスク許容度×人間関係」で自分の志向を決めることです。
- ワーク&インベスト志向
- ワーク&プライベート志向
- ワーク&セカンドジョブ志向
- ワーク&ワーク志向
これは、ライフステージで変わっていくもの。私も仕事を任せてもらえるようになるまではワーク&ワーク志向、その後長時間労働に疲れてワーク&プライベート志向になり、転職してワーク&ワークになり、仕事が落ち着いたらワーク&セカンドジョブ志向で料理教室を開催したりしていました。
今どこにいて、今後どこになりたいかを志向で決めておけば、朝に「種まき」をすべきことに迷わなくなるんです。
「松竹梅」で早起きのモチベーションを保つ
5時こーじさん:目指すロールモデル、早起きする目的を「志向」から探すのってすごく面白いなと思ったんですけど、そこに辿り着いたきっかけは何だったんですか?
池田さん:やっぱり自分がショボかったからですかね(笑)。人と比べることから解放されるにはどうすればいいかを考えると、まずは自分はどうかを知ることが大事なんですよね。それなのに、前提条件や生まれた状況を無視して同じ舞台に上がろうとしていた自分に気付いたんです。
5時こーじさん:今は情報に溢れているので、SNSなどを見ていると瞬発的にフューチャーされる人が多かったり、派手な成功体験が世の中に見えすぎちゃって、余計に自分と比べてしまいますよね。
さらには、「早起き」というのは続けても突発的に変わるものじゃない。そのなかで、池田さんはどのようなマインドで継続してきましたか?
池田さん:「100%を目指さない」ことですね。早起きは自己肯定感を上げる手段だと思っているので、数字で具体的に設定したなかで8割できればオッケー、ということにしています。
目標達成や早起きに失敗してしまう原因は、完璧な自分を理想としているところです。
「朝5時半に起きる!」と目標をひとつに決めてしまうと、できない自分にフォーカスされちゃうので、「朝活松竹梅」と段階ごとに決めておくんですよ。たとえば、最高の4時起きは「松」、5時に起きたら「竹」、そして早起きができなかった時も「梅」にしちゃう。そうすると、実質毎日早起きができていることになる。
早起きはモチベーションが大事なので、それを保つために「松竹梅」は有効です。
5時こーじさん:僕も「シンデレラルール」という、24時に寝て7時に起きるのをバッファにしています。
池田さん:「戦略的二度寝」もそうですが、自分で決めるのが大事ですよね。決めたことなら納得してできる。言葉で自分を盛り上げるのは、よくやっているかもしれません。
5時こーじさん:ちなみに、早起きができなかった日を「梅」にするとして、毎日「梅」ばかりで落ち込んでしまいそうですが…。
池田さん:それは、「梅」の設定のハードルが高すぎるんです。たとえば、「朝、窓を開けて深呼吸するだけでオッケー」にしちゃう。「できない」=「梅」なのではなく、「これだけできた」という小さな成功体験を「梅」にする。意味付けを変えてみてください。
「早起き」というのですらハードルが高いのであれば、2週間〜1ヶ月で治る時差ボケだと考えて「早起き国への留学」という考え方にするのもアリですよ!
早起きをするために「交渉力」を磨こう!
5時こーじさん:あと、僕は早起きよりも早寝が大事だと思っているんですけど、池田さんが思う早寝のコツはありますか?
池田さん:「これを飲んだら眠くなる」「このアイマスクを着けたら眠くなる」みたいな「入眠スイッチ」を持つことですね。
あとは、いかに「交渉力」を持つかです。私は以前、資料作成の専門部署にいたのですが、コンサルタントからデータが上がってくるまでの待ち時間がすごく長く、夜遅くまで残っていたんですよ。それを、「私は朝型なので、夜中のあいだにじっくり作ってください。朝早く来て仕上げるので!」と言って、さっさと帰るようにしました(笑)。
ルールだからダメ、と諦めるんじゃなくて、自分の主張を相手のメリットに絡めて提案する「交渉力」は自分軸で生きるうえで大事だと思います。
5時こーじさん:僕も新卒1年目の6月に、就業時間を2時間早めてもらえないか交渉していましたね。僕は夕方以降は本当に使い物にならないので、「飲み会しんどいんですよねぇ、モーニングに変えませんか?」とマネージャーに言って、実際に早起きを体験してもらいました。そうすると、相手も一度体験しているわけだから、すんなりと受け入れてくれて。
池田さん:そういえば、マクロミルさんも、部署内交流を目的に、シャッフルモーニングを社内で行ったところ、皆が早起きの良さに気付いて、だんだんと自主的にやるようになったそうです。そうやって、体験してもらうのって大事ですよね。
5時こーじさん:ちなみに、ひとり暮らしならばまだしも、家族やお子さんがいるなかで、自分ひとりが朝型に切り替えるのは難しい場合もありますよね。池田さんは、どのように対処していますか?
池田さん:子どもは本当に寝ないので、子育て中は「無理だ!」と割り切るのも大事です。私も一時期は早起きができませんでした。
また、家族の場合は「巻き込む」のが有効だと思います。ポイントは、楽しそうにすること。わたしの夫も、10年前は朝型ではありませんでしたが、あまりに私が楽しそうにしていたら「そんなに楽しそうならやってみようかな」と早起きをはじめました(笑)。
早起きって慣れるまでは辛いんですよ。だから、「やろうよ!」と無理に言わずに、自分の変化の様子を見せていくのが良いと思います。それに、逆にあえて巻き込まないからこそ、自分の時間もできるので、同時に起きるより、実はズレていたほうがいいかもしれませんよ。
5時こーじさん:たしかに。僕も妻とは起床時間が1時間ズレているので、それが逆に良かったりもします。最後に、池田さんから皆さんに、「今日から行動できること」を教えてください!
池田さん:とりあえず、4色ボールペンを買いましょう!「自分で決められないこと」って今後ネックになると思っていて。自分の人生って誰も決めてくれないし、本気で自分の人生を変えるためには、生き方を考えるべき。
その手段として、すぐにできるのが「色分け」だと思っています。自分の人生のハンドルを自分で握るために、価値観や好き嫌いの軸、優先順位を明確化していきましょう!
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池田 千恵さん
朝イチ業務改革コンサルタント。2度の大学受験失敗を機に早起きに目覚め、半年の早朝勉強で慶應義塾大学総合政策学部に入学。外食ベンチャー企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て、2009年に『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』を刊行し、「朝活の第一人者」と呼ばれるように。現在は「朝1時間」の業務改革による生産性向上、働き方改革のための手法を企業に指導しているほか、朝活コミュニティ「朝キャリ」を主宰。
5時こーじ(井上 皓史)さん
1992年、東京都生まれ。朝活コミュニティ「朝渋」代表。株式会社Morning Labo取締役。朝活コミュニティ「朝渋」を東京・渋谷で立ち上げ、会員とともに、読書や英会話などさまざまな活動を行う。また、本の著者を招いたトークイベント「著者と語る朝渋」は年間5000人を動員する規模に成長した。2018年、勤務先の企業を退職し、ライフワークだった「朝渋」に本格コミット。早起きを日本のスタンダードにすることを目指す。2020年『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です~明日が変わる大人の早起き術』刊行。全国版・朝活オンラインコミュニティ「朝渋オンライン」では、月4回以上開催される「朝渋イベント」の生中継にて配信。
Twitter:@kojijico
※本記事は「朝渋TIMES」の記事を再編集したものです。
https://asa-shibu.tokyo/2020/06/11/ikeda/