今日のカフェボンボンの本棚は、『誰もいない夜に咲く』。
直木賞作家・桜木紫乃が北海道を舞台に恋愛模様を描く心にしみる傑作短篇集。この季節にぴったりの北国の物語をどうぞ。
『誰もいない夜に咲く』
著者:桜木紫乃
出版社:KADOKAWA
作品を読み終えてから月日が経っても、物語のシーンが鮮明に蘇ってくる。
北国の冷たく厳しい冬の風景。孤独な魂をかかえて寄り添う男と女。彼らは吹きすさぶ風と波の音をただ黙って聞いている。そんなもの哀しい光景を詩情あふれる筆致で描く。
「波に咲く」は酪農家の若い夫婦のやるせない愛を描いた物語。家を継いだ秀一のもとに嫁いできたのは、中国から迎えた若く愛らしい「花海(ホアハイ)」。初めての夜、日本語がわからない花海に秀一はあることを打ち明ける。そして「ずっと一緒にいますから。守りますから」と約束する……。
雪が吹きだまる冬の海岸で波の泡を眺めながら、しぐさだけで心を通わすふたりがいじらしくせつないけれど、花海の肌の蜂蜜に似た香り、牧草と墨の匂いは、どこか雪解けの気配を漂わせもするのです。
うらぶれた家と安ホテルを舞台に行き場のない愛を描いた「海へ」など7篇を収録。初雪の便りも聞かれる北海道。北国の愛の小説を堪能してください。
Love, まっこリ〜ナ
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