今日のカフェボンボンの本棚は、『新車のなかの女』。
『シンデレラの罠』『殺意の夏』などで知られる、仏ミステリー界きっての鬼才セバスチアン・ジャプリゾ。美しいヒロインを待ち受ける不可解な謎と悪夢を描いた傑作が新訳で登場です。
『新車のなかの女』
著者:セバスチアン・ジャプリゾ/訳:平岡敦
出版社:東京創元社
ミステリーを読むなら、思いっきり翻弄されたい。作者の術中にはまって迷宮をさまよいたい。その望みを叶えてくれるのが本書。読者をあざむく罠が物語のあちこちに仕掛けられている。
ヒロインは金髪の美女ダニー。彼女は勤務先の社長の新車を回送するよう頼まれるが、そのまま南仏の旅へと車を走らせる。南へと向かうのはほんの気まぐれ。わたしはまだ海を見たことがなかったから。
だが、幸せな気分もつかの間、ダニーは奇妙で不可解な事件に次々と巻き込まれていく。南仏に来たのは初めて。ただ海が見たくて。それなのに、誰もが昨日私に会ったという。なぜみんな私を知っているの?
澄んだ青空ときらめく陽光のなかを、まっさらなサンダーバードで駆け抜けるダニーがまぶしい。南仏の太陽に暗い影が忍び寄るすきはないはずなのに。だからこそ、自分自身を見失っていくダニーの恐怖がよけい際立つのかもしれない。
ヒロインが魅力的な極上のミステリー。『シンデレラの罠』もぜひどうぞ。
Love, まっこリ〜ナ
*朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』連載一覧はこちらです。
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