『ティファニーで朝食を』の著者トルーマン・カポーティによる旅のエッセイ。
『遠い声 遠い部屋』でデビューし、天才作家として注目されていた20代のカポーティが、旅先での印象的な出来事や思い出をつづった、ひときわ美しい散文集です。
『ローカル・カラー/観察記録 —犬は吠える(1)—』
著者:トルーマン・カポーティ/訳:小田島雄志
出版社:早川書房
火山の絶壁の上を走る海沿いの道を歩き、ケシの花をたどって行くと見知らぬ海岸に出る。絶壁に囲まれた秘密の海は澄み切っていて、イソギンチャクや魚の動きまで見えた……。
風に揺れるオレンジやレモンの木、ぶどう畑、コウモリが飛び交う夕暮れの町を、カポーティが見たままにうっとりと思い浮かべてみる。ナポリ湾に浮かぶ島の思い出を記した「イスキア」では、繊細な描写と練り上げられた文章が、南イタリアの島の空気や匂いまで感じさせてくれる。
時間を気にせずにゆったりと過ごす日々。カポーティは宿で働く少女と一緒にアメリカ風パイを焼いてみたりもする。言葉の通じないふたりは辞書をめくるのに忙しくて、パイ作りはいつも失敗に終わってしまう。
旅先での著者は若くて陽気なアメリカ人であり、同時に、孤独な旅人でもあったのだと思う。昼下がりのシエスタの時間。ひとり眠らずバルコニーからじっと目を凝らす、作家の姿が見える気がします。
南イタリアの島の「朝時間」は、朝早く目覚める朝。それは夏のしるし。
ニューオーリンズ、ニューヨーク、ハリウッド、タンジール、スペインの列車などのさまざまな風景を収めた『ローカル・カラー』、マリリン・モンロー、ジャン・コクトーらの人物スケッチ『観察記録』を収録しています。
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Love, まっこリ〜ナ