今日のカフェボンボンは、タイを舞台にした珠玉のストーリー『観光』。
タイ系アメリカ人による、ベストセラー短編集です。
『観光』
著者:ラッタウット・ラープチャルーンサップ/訳:古屋美登里
出版社:早川書房
観光地としてのタイを少し知っていたとしても、そこに根をおろして暮らす人々のことはほとんど知らない。想像しようとしても、エキゾチックなフィルターがかかってしまう。
シカゴで生まれタイのバンコクで育った著者は、恋人や家族、兄弟、友だちという小さな単位で、タイの人々を密度濃く描き出す。生きることの過酷さ、切なさに満ちていながら、現実と向き合うタフなエネルギーに圧倒される作品ばかりです。
表題作の「観光」は、失明寸前の母親と息子が、リゾート地の小さな島に旅をする物語。母の目に映るおそらく最後の海は、圧倒的に美しい。母と息子の絆と深い悲しみが、舞台がタイであるという意味を超え、激しく胸に迫ります。
「観光」の「朝時間」は、燃え立つように輝く日の出。
母の目から日に日に光が失われていくなか、親子は海に昇る太陽を万感の思いで見つめます。
闘鶏によって身をほろぼす父を見つめる娘の痛みを描く「闘鶏師」。そのほか「ガイジン」「カフェ・ラブリーで」など傑作7編を収録しています。
Love, まっこリ〜ナ