朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『ワーカーズ・ダイジェスト』。
お仕事小説の名手・津村記久子が、職場でただ一度だけ出会った男女それぞれの日々を描きます。仕事に疲れたとき、心にしみる小説をどうぞ。
『ワーカーズ・ダイジェスト』
著者:津村記久子
出版社:集英社
満員電車に乗って、仕事に追われて、疲れ切って、それでもなんとか今日を乗り越えていく。そんな毎日を送る奈加子と重信は三十二歳の会社員。ある日、ふたりは仕事の打ち合わせで初めて顔を合わせる。ただ一度出会い、それぞれの仕事に戻っていく奈加子と重信だったが、時折お互いのことを思い出して……。
仕事もプライベートもあまり順調とはいえないふたり。朝、自転車で駅へと向かうとき、奈加子は「せめてペダルだけは軽快に踏んで」みたりもする。だけど体内時計は狂ったままでいつだって疲れはとれなくて、帰りの電車の窓に映る自分を眺めながら「先細ってるなあ」としみじみ思うのだ。
自暴自棄にならずにいるけれど、にっちもさっちもいかなくなるちょっと手前のとこあたり。やるせない。でもしょうがない。この感じがとてもリアルに伝わってきます。
それぞれの朝。奈加子は起き抜けの顔を見たくなくて、鏡を見ずに顔を洗う。朝食の支度をする重信が「グーテンモルゲン」とつぶやく。そして生焼けのトーストをかじりながら「朝がいいものなわけがない」と思う。出勤前のふたりの朝のシーンは、まるで映画のはじまりのように印象的です。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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