朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『ばにらさま』。
以前、カフェボンボンでご紹介した本が文庫化されました。恋人、夫婦、隣人、同級生などさまざまなつながりのなかでこじれていく人間模様を、心理描写の名手が鮮やかに描きます。2021年に亡くなられた山本文緒さんの傑作短編集をこの機会にぜひ。
『ばにらさま』
著者:山本文緒
出版社:文藝春秋
「わたしは大丈夫」の主人公は、つましい暮らしをする主婦の「私」。どんなに暑くてもエアコンは点けない。リモコンの電池も抜いた。一円だって無駄にしたくないからパンもお菓子も手作りする。義母のためにピザを焼いたら台所がすごく熱くなって、「少し冷房入れたら」と言われてしまう。「お義母さん、暑いですか」「私のことじゃなくて、あなたがつらそうだから」「私なら大丈夫です。ありがとうございます」。でも心のなかではこんな言葉をつぶやいている。「もう来ないでいいのにこの人」と。
まるでバニラアイスのような女性との恋愛を描いた「ばにらさま」。とびきりかわいい彼女に「僕」は舞い上がっているけれど、ふたりのデートにはどこか不吉な影が。手をつないできた彼女の指は氷みたいに冷たくて。そして彼女は僕の問いかけに「うん。大丈夫」「ううん大丈夫」と、口ぐせのよう答えている……。
思い通りにいかない現実に直面しても助けてと言えない主人公たち。どの物語からも「わたしは大丈夫」というつぶやきが聞こえてくる気がします。本当は全然大丈夫じゃないんですよね。本人もそれをわかってる。だから余計に痛々しくて危うくて心がひりひりするのかもしれません。
表題作をはじめ「わたしは大丈夫」「菓子苑」「バリヨン心中」「20×20」「子供おばさん」の6つの物語を収録しています。人間模様の見え方が一瞬で変わる鮮やかな仕掛けもほどこされています。巧みな心理描写とともに予想外のストーリー展開をお楽しみください。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。
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