私たちの生活は便利なものが次々に開発され、日に日に“便利”になっています。でも、私は最近、その便利が、睡眠を含む人の生活を乱す原因になることがある…と考えています。

便利ものができたのに生活はますます忙しくなっている

洗濯機、電子レンジ、FAX、インターネット、携帯、コンビニエントストアなどなど、戦後、私たちの生活はこういった商品の開発によって大きく変わりました。女性を家庭の仕事から解放し、社会へ進出するのにも大きく貢献しました。

でも、睡眠状態が悪くなり始めたのは電気の発明後だといわれるように、便利な物も使い方を間違えると逆効果になりうることを、私たちは忘れてはいけないように思います。

その証拠に、便利なものができているのにも関わらず、私たちの生活は益々忙しくなっています。私がライターの仕事を始めた当初は、ワープロはあったものの、原稿は手書きがメイン。FAXやバイク便もまだ一般的ではなかったので、生原稿を電車に乗って出版社まで届けてました。

 

こう話すと、私がずいぶん昔の人のように思われるかもしれませんが、そんな生活がわずか数年で一変。FAXやバイク便、PCにインターネットができて、わざわざ持って行かなくてもよくなり、どれだけ余暇ができるかと密かに期待していました。でも、気がつけば、忙しさは変わらないどころか一層忙しくなりました。その分、仕事の単価は下がり、納期も短くなり、それ以上に働かなければならなくなりました。
皆さんの生活はどうでしょう?

 

はじめは本当に便利だったものも、今では便利が人の生活や限度を超えてしまったように思います。

いつでも手に入る。楽ができる怖さ

先日、女性管理職の方が特集されているテレビを見ました。仕事のある週日は、帰宅は夜9~10時はあたり前。そのため夕食はほぼコンビニ弁当。食事を作らなくていいのは忙しい人にとって本当に楽で便利です。

でも、その分、仕事に当てられる暮らしって一体なんだろうと思いませんか? それだけ働きたい人は、それはそれでいいと思うけれど、そんな生活が暗黙のうちに強要されているようで、怖い気がしています。プライベートな時間をもっと楽しみたい、食の安全を考えて家で食べたい、睡眠をしっかりとって健康管理をしたい、子どもやご主人と一緒に過ごす時間を大切にしたいと思う人は、とても生活しにくくなってしまいます。

人以外の生物は、食べて寝て、家族で過ごすことを基本にした暮らしを、もう何万年も変えていません。また、植物も1日に成長する速度はほぼ決まっています。でも、人の生活は機械のような速さで動くことを求められているよう。本来“便利”とは、その人の生活をより豊にするものだと私は信じていますが、現在は、人の能力を無視した便利に振り回され、生活リズムを乱してしまっている人が増えているのでは?

 

携帯やインターネット、コンビニも、寝るべき時間に利用できてしまう。エゴ的欲求が満たされて、それは一見、とても便利です。でも、人の睡眠・覚醒リズムを支配する時計は動物以上に弱いため、生体リズムは知らず知らずのうちに乱されている怖れがあることを自覚すべき。また、不便だからこそ人は体を使い、試行錯誤して脳を使い、それを克服した時に達成感を感じたり、能力を発揮できることも少なくありません。不便さを全く知らず、便利な物だけを使い続けていたら、人の能力はいつか退化してしまうのでは…、本当にロボットのようになってしまうのでは…と老婆心ながら感じたりしていますが、皆さんはどうお考えでしょう?

便利なものに依存しすぎは赤信号

日本経済は大量消費で発展し、現在も消費することで成り立っています。そのため、企業はどんどん”便利”で新しい物を次々と開発します。でも、安易に手を出すことには副作用もありうることを心にとめておくべき。寝るべき時間を過ぎても手放せない、時間を節約するために利用するものが増えたという人は要注意。便利な物に依存して基本的な生活能力が下がってしまう可能性があります。

 

便利な物は、自分の都合でいつでも利用でき、楽ができます。でもそれは、裏を返せば、生活リズムを乱し、運動不足(運動不足は安眠や健康の妨げになる)の大きな原因に。便利なものを使っているのに体調が優れない、生活が不規則になったと思う人は、1日の生活スケジュールを見直すべきでしょう。

 

朝起きて夜眠る。体に良いものをきちんと3食食べる。仕事をしすぎず、生活を楽しむ。そういった基本的な生活を大切にした上で、利用すべきでしょう。寝るべき時間には利用を控える。そうすれば、強い光などの刺激を受けることもないため眠りやすくなり、ムダな電気を使わずにすみます。食事を手作りにすれば、体や頭も活性。食の安全も確保でき、プラスチックゴミなども減らせてエコにつながります。また、あえて不便さを体験することは、決してマイナスではなく、新たな刺激や楽しみにつながることも。その大変さがわかると人に感謝できるようになり、生活も豊かになることがあるのでは…と思います。

 

とくに子どもの頃は、試行錯誤しながら体や頭を働かせる体験がとても大切。ただ、机の前に座っていれば便利なものが次々と好きな時に与えられるといった生活は、基本的な生活が乱れるだけでなく、人生を受動的にして、生き方や楽しさを自分で切り開くことができなくなってしまいます。

 

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

ぐっすり睡眠&スッキリお目覚めのツボ[連載終了・全70回]

睡眠改善インストラクターによる快眠&めざめのヒント[連載終了・全70回]
Written by

睡眠改善シニアインストラクター 竹内由美

日本睡眠改善協議会認定・睡眠改善シニアインストラクター。日本産業カウンセラー協会認定・産業カウンセラー。
米国Mary Baldwin College心理学科卒業。フリーの編集ライターとして美容や健康などに関する記事に携わり、その経験から睡眠やメンタルヘルスの重要性に気付き、上記の資格を取得。忙しい現代人にこそ良質な睡眠が大切だと、雑誌や講演活動などを通して睡眠について伝えている。
著書には「眠りダイエット」(文芸社)がある。

連載記事一覧

今日の朝の人気ランキング