姿勢の悪さとバランスの偏った筋肉の使い方は、こりや痛みを引き起こすだけでなく、顔のたるみや首のしわにも影響を与えてしまいます。
よじれたコラーゲン線維とエラスチン線維を解きほぐす「筋膜リリース」でよじれを解いていきましょう。首都大学東京大学院 教授の竹井先生いわく、こまめに行うことがポイントだそうです。
先生/竹井 仁(首都大学東京大学院 教授)
取材・文/山崎潤子(ライター)
全身リリース→猫背改善リリースの順で
一部に寄り集まったコラーゲン線維とエラスチン線維は、筋膜の基質が粘っこいゲル状になっていますので、サラサラの水溶液に戻すには、ゆっくり、気持ちよく伸ばしたり縮めたりするのがポイント。筋膜をリリースしていくと、最初の約10秒はエラスチン線維が伸ばされますがその後、伸びが止まるのを感じると思います。リリースは、ここからが本番。気持ちいいと感じながら伸ばし続けると、90秒〜3分間くらいでコラーゲン線維の制限がリリースされ、筋膜のよじれが解きほぐされていきます。まずは、全身の筋膜をリリースするウォーミングアップから始めましょう。
ウォーミングアップ
- 背中を床につけたまま、腕を頭上に上げたり、横に伸ばしたり、足先をからだから遠くに離すようにしながら、腕も足も筒のようにして、伸びをします。
- 胸も張るようにしましょう。
- いろいろな方向で気持ちよい「伸び」をしましょう。
仰向けになり、腕を頭上に上げたり、横に伸ばしたり、からだから遠くに離すイメージで、腕と足を気持ちよく90〜120秒伸ばします。
ウォーミングアップが終わったら、全身のリリースへ。筋膜は縦横斜めにつながっているので、まずは全身を調整してから問題のあるパーツの順に行いましょう。硬く、緊張している部位を意識し、無理せず、ゆっくり呼吸しながら持続的に伸ばすことが、筋膜リリースを行うときのポイントです。
全身のリリース
- 片方の手をテーブルか椅子の背に置く。
- テーブルに置いた側と反対側の足を、テーブル側に向かって前で交差させ、片手を頭上に伸ばす。このとき、両脚はひざの前後で密着させ、さらに、前に出した脚で床を押しながら手を伸ばす。
- 頭上に上げた手を反対側に倒していき、からだ全体の側面を30秒以上リリースする。左右それぞれ3回繰り返す。やりにくいほうを時間をかけてほぐせば、骨盤の左右の高さも整ってくる。
もうひとつ、下で紹介する猫背を改善するリリースは、首のしわが目立たなくなる効果もあります。
猫背を改善するリリース
- 椅子に座り、背中を丸めすぎないようにしながら平泳ぎの要領で、両手を前に出す。両方の肩甲骨ごと前に出し、左右の肩甲骨の間を20秒以上リリース。
- 両ひじを肩の高さにキープしたまま後ろに引き、胸の前を20秒以上リリース。あごを引き、顔は正面を見る。うつむくのはNG。
- あごを引いたまま、両ひじを肩より前に戻し、両手のひらを前に向けるように両方の肩甲骨を引き起こして20秒以上リリース。このとき、腰が反らないようにおなかに力を入れる。慣れてきたら、20秒を30秒、40秒と増やして3回繰り返す。
朝昼晩、こまめにリセットすることで、より効果を実感
姿勢は、デコルテの美しさにも影響します。猫背になると、首の両側面に位置する斜角筋隙(しゃかくきんげき)にリンパ液が入り込み、鎖骨が埋もれやすくなります。鎖骨部分はリンパの最終地点。ここが滞っていると顔はむくみ、首まで太く見えるので、顔のリンパマッサージを行う最初と最後に、くぼみをほぐしましょう。やり方は簡単。両手を胸元でクロスさせ、鎖骨のくぼみをゆっくり、円を描くように押すだけです。
筋膜リリースは、朝昼晩に行うのがベスト。ひとつの筋膜リリースにつき×3セットが基本ですが、朝昼晩各1セットでも構いません。日本人は疲れるまで仕事を頑張り、疲れきったら病院に行けばいいと思いがちですが、1日の中でこまめにリセットするほうが効果はより高いのです。ほとんどの人は2週間続けると、最初30秒しかできなかった動きが90秒できるようになる。筋膜の動きがよくなるため、からだが変わった感覚が出てきます。そうなると気持ちも変わってきますから、種類を増やしたくなる。さらに2週間続けると、今度は周りから”姿勢がよくなった””なんだかキレイになった”と褒められるようになります。正しい姿勢で動けるようになると、全身の筋肉量と代謝が上がるので、ダイエットにもつながりますよ。
—-猫背は見た目が美しくないうえ、さまざまな不調の原因にもなるとわかっていても、ラクだから、気を抜くとすぐに猫背になってしまうんですよね。筋膜も加齢によって動きが硬く小さくなり、古いコラーゲン線維が居座るそうなので、筋膜リリースで日々リセット&新陳代謝のアップに励みたいと思います。
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竹井 仁 (首都大学東京大学院 人間科学研究科理学療法科学域ならびに健康福祉学部理学療法学科教授 理学療法士 医学博士)
専門分野は、徒手理学療法、運動学、神経筋骨関節疾患。整形外科のクリニックにて、理学療法業務も行っている。30万部を超えるベストセラー「自分でできる! 筋膜リリース パーフェクトガイド」(自由国民社)、「日めくり まいにち、筋膜リリース」(扶桑社)、「やせる! 筋膜リリース ダイエット編」(自由国民社)など著書多数。
取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ
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