今日のカフェボンボンは、『針がとぶ』。
少しずつ重なり合うショートストーリーが7つ。『つむじ風食堂の夜』の作者・吉田篤弘による短篇集です。
針がとぶ、月と6月の観覧車、少しだけ海の見えるところ。素敵なタイトルの物語は、柔らかい毛糸の結び目のようにつながっている。
最初のストーリー「針がとぶ」では、主人公の「わたし」が伯母の遺品にLPレコードを見つける。レコードを繰り返し聴くうち、B面の最後の曲の針が飛ぶことに気づく。
一カ所だけ、ほんの一瞬。“そこに、わたしの聴くことのできない音楽があった。”
ほんとにそう。“聴くことのてきない音楽”に似たものが、日々の暮らしの中にはたくさんあるんだと思う。その一瞬の静寂に気づけたら、きっと何かが違って見える。
7つのストーリーの「朝時間」は、幸運のアイスクリーム。旅先の食堂のデザートに入っていたのは、幸運の印の深紅の粒だった。
静かな余韻を残す旅と記憶の物語を一年の始まりに。
以前ご紹介したこちらもどうぞ。
*『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
*『おかしな本棚』
『針がとぶ Goodbye Porkpie Hat』
著者:吉田篤弘
出版社:中央公論新社
Love, まっこリ〜ナ